縁覚界というのは、畑を耕したり華を活けたり、大工仕事、針仕事をしたり身体を働かせることによって、そこに何ともいえない苦しみを忘れた三味境(さんまいきょう)ともいうべき状態を心に感ずるものである。よく言う名人上手の心境等はこれにあたる。
 
峯 「自己陶酔の状態」
吉男「これを超えて菩薩まで行かなければならないなら、これの意味を深めて、この文章で十分なのかなーあ。でも現実にそこまで至る状態。たとえば、具体的に峯はラーメン店をやっていつと、職人と言えばいえるでしょ。」
峯 「まあそれはそうだなあ」
吉男「やっぱりいいものが出来たときはうれしいよね」
峯 「自分で納得できるものができた時だね。客じゃないんだ」
吉男「お客さんが旨いって言っても関係ないのかい」
峯 「関係はあるけどさ、関係ないわけではないけれど、たとえば舌とは、若者の舌と50歳ぐらいの舌とは違うわけよ。若者が食べておいしいといってくれるのも嬉しいんだけれど、基本的に身体が求めている味は違うから、若者に出したラーメンをそのまま50〜60歳の人に出したらたぶん食えないだろうな。」
吉男「そこまで考えてるんだ店長は」
峯 「うちはオーソドックスだよ。スタンダードを目指す。誰が食べても美味しいラーメン」
吉男「それが出来たとと思えたときは縁覚」
峯 「その中でも、仕込みやなんかやっていても幅があるのさ。本当に、前の仕込みなんかも、醤油なんかも、今はほぼ安定しているけれども、前の時、誤差は天と地雲泥の差だったが、誤差は少なくなって良くできた日と悪くできた日」
吉男「その日によって違う」
峯 「良くできた日はこれは日本一旨いんじゃないかと思う」
吉男「それこそ縁覚」
峯 「そうそう」
吉男「それは、具体的なやつだよね。そういえば自分もプログラムを作って人に見せて、こうやって「いやーおもしろい」と言われたら嬉しいよね」
峯 「自己陶酔の世界だよね」
 

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